マイちゃんが中学部2年生になった2002年9月、アヤちゃんがKindergartenからPre Schoolerになりました。日本の幼稚園でいう年長組さんです。来年は小学生ということで、Pre Schooler にはそれまでのお歌やお絵かきに加え、多少のお勉強が導入されます。具体的には、英語のフォニックスや数字のお勉強です。
ただ、このKindergarten はこのときはまだKindergarten のみしかなく、それ以降のElementary schoolもJunior high school もありませんでしたから、 その後の学校をどうしようかと悩んでいました。(この Kindergarten も現在は、Elementary School が別校舎で設置されています。)
ちょうどその頃、新しいINSが開校されることを聞きました。Kindergarten からElementary School まで開校され、将来的にはJunior High School 、High School と開校する予定とのことでした。私は、ダメもとで面接を受けてみることにしました。
この学校は、もともと日本に住むドイツ人の子どものために開校されていたドイツ学校でした。けれど、地震のために格段に減ってしまった外国人に比例して在日ドイツ人も減少し、さらにドイツ政府からの援助も削減されている状態だったために、学校存続のためINS部が併設されることになったそうです。
すでに私がこの学校のことを聞いたときは、INS部が開校されている11月でしたが、とりあえずお電話をして、Interview していただきたい旨を伝えました。お電話に出られた校長先生は、現段階の日本人枠予定人数は定員が埋まっていることをお断りされた上で、一応、Interview だけはしましょうとおっしゃいました。
11月中旬の約束の日に、私とアヤちゃんはこの学校にInterview に行きました。
校長先生が簡単な自己紹介をされた後再び、現段階では日本人枠の空きがなく、入学許可をしてもwaiting listに載せるだけで、すぐに入学はできないことをお断りされました。私はそのことを了解し、とりあえずInterview をして頂きました。
INSとは、もともと日本に在住する外国人の子どものための学校です。両親ともに日本人の日本国籍の子どもが入学するのですから、定員枠があるのは当然のことですし、私たちが無理を言っていることは承知の上のことですから仕方ありません。
Interview では校長先生はまず、アヤちゃんに英語で話しかけられ、彼女の英会話力を試されたようでした。アヤちゃんも少し緊張していましたが、それでも校長先生の質問にも答えて、最後には校長先生のジョークに大笑いしたりしていました。
それから校長先生は、私になぜ日本人なのにINSに入学させたいのかを質問されました。私は、アヤちゃんの姉であるマイちゃんが障碍を持っていること、また障碍教育に関して日本の学校が立ち遅れていること、そして何より姉妹の関係が今とても良く、アヤちゃんの思考においてこの先も障碍者と当たり前に関われる人間に育てたいので、そのような環境の学校に入れたいと思いINSを希望し、現在もINSのKindergarten に通わせていること、しかしそこはElementary がなく、出来たらこの学校のKindergarten に編入してそのままElementary に進学させたいと思っていることをお話しました。
すると、私のつたない英語での説明にも関わらず校長先生は、「私は、INSに入学するのはやはり基本的には外国人の子どもだと思っています。しかし、現在では多くの日本人の方も入学を希望されるので、とりあえず日本人枠を設け、入学定員枠を超えた方にはwaiting してもらっている状況です。単に英会話教室に通うような感覚で入学される方には、正直申し上げてご遠慮願いたいと思っています。しかし、あなたのようにその理由がINS入学を必要とすると思われる方には、私の方が是非入学して頂きたいと願います。」とおっしゃいました。
「でもwaiting list があるのですぐには入学できないのですよね? いつ頃なら入学の見込みがあるのでしょうか? また例え入学が許可されても、彼女の英語力でやっていけるのでしょうか?」と私が問うと、校長先生は、「waiting list は決して早いもの順ではありません。外国籍の者なら無条件に入学させるのと同様に、この学校に入学させることが必要であると思われる人は、いくらwaiting list に多くの人が名を連ねていても、その順に関係なく入学を許可する権限を私は持っています。また、彼女の英語力は充分このINSへの入学のレベルを満たしているのでご心配ありません。」とおっしゃいました。
そして、学校運営の委員会(つまり日本の私学校の理事会のようなもの)に入学許可を諮って、できるだけ早い次期に入学できるように手配します、と約束して下さいました。
私は、Interview だけ受けてwaiting list に載せてもらえればラッキー、くらいに考えていたので、入学を許可されたことにとても驚きました。もちろん、校長先生との会話に緊張しながらもちゃんと返答できたアヤちゃんの英語力もあったからですが、障碍児を抱える親の気持ちを充分に理解して下さった校長先生に感謝の気持ちでいっぱいでした。
それから、翌月の12月上旬に校長先生から、1月から入学できることになったこと、翌週にX'ms Market があるので、是非マイちゃんも連れてみなさんでいらっしゃい、というお電話を頂きました。校長先生は、約束どおり委員会にアヤちゃんの入学を諮ってくださり、入学が許可されたのでした。
招待いただいたX'mas Market にアヤちゃんとマイちゃんと私と母で行きました。
来月からアヤちゃんがこの学校に入学できるのだ、と思うと、先日Interview で来たときよりはるかに素晴らしい学校に見えました。
アヤちゃんの入学が許可されたことで一安心するとともに、12月のクリスマスブレイク(冬休み)に入るまでに、通っていたKindergarten の退学手続きを執り、新しい学校への入学手続きの書類を揃えるために役所に行ったり健康診断のための病院に行ったりと、慌しく走り回る年末になりました。
しかし、アヤちゃんの小学校がすでに決まったことで、私は安堵の気持ちで新しい年を迎えることが出来たのでした。
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